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ヒナータフ通信#63 ③「お宝の、ぬし」 ...

ヒナータフ通信#63 ③「お宝の、ぬし」 $マークの宝箱から噴き出す、紺碧の光条に、周囲はマリン・ブルーの海に染まった。片目を手のひらで覆い、「スパニビーチェ! モシューレチカ!」、と、喜びのあまり、全く意味わからん言語で、おたけびを上げる私。 と、宝箱の、錆びた丸い鉄の蓋が、宙高く舞い上がり、内部から、水しぶきと共に、背中に黒い翼を広げた男が飛び出してきた。 「あち、あち、あちっ!」、と、男が翼を羽ばたかせる度に、はね飛ぶ水滴を避ける私。地面に落下した、鉄の蓋をかろうじて避ける私を睥睨し、男は重々しく口を開いた。 「貴様か、俺の永き入浴シーンを、妨げた者は!」良く見ると、いや、良く見ないでも、翼の生えた男は、素っ裸であり、筋骨隆々の体つき。特に、腹筋が、「シックス・パック」に割れている。私は、この不可解な生物を、「シックス・パック」を略して、「シスパ」と、素早く脳内で命名した。「サルノコシカケ」という、実際に猿が乗ったら、確実に落っこちそうなキノコがあるように、こうしたものは、フィーリングで、適当に付けるのが、一番である。 それに加え、何故かはよく分からないが、ギリシャ彫刻のような、彫りの深い顔立ちの「シスパ」は、両手を荒縄でいましめており、そのお陰で、非常にデリケートな何かが隠れ、食欲を削ぎそうな描写をしないで済む事に、私は胸を撫で下ろした。 すると、シスパは、厳めしい表情で、「ドラム缶風呂」にそっくりだが、あくまで「宝箱」の中に手を突っ込むと、何かを引っ張り出して、私に尋ねてきた。 「おい、貴様、この、金のソイエと、銀のソイエ、湯の中へ落としたのは、どっちだ?」 「いえ、"女性用脱毛・除毛器"として名高い、ソイエをお湯に落としたりしませんが」 被せ気味に即答する私を見て、シスパは、やや残念そうに、言った。「ぬう、貴様、正直者だな。この、金と銀のソイエ、両方、やろう。あと、普通のソイエも」 「あ、いや、だから、いりませんて」 私は、グイグイ押し付けられた、金、銀、普通、三種のソイエに困惑した。……まさかとは思うが、こいつ、このソイエを3日ローテーションで、使っていたのではあるまいな。私は、シスパの、ツルテカ・ボディに目をやると、何か確信めいたものを感じ、瞬時に踵を返した。……が、回り込まれてしまった! ばっさ、ばっさ、と、翼を広げて空中に浮かぶシスパに、首根っこを引っ掴まれ、私は、強引に回れ右させられた。 「いいか、貴様は、正直者らしい。正直者には、"願い"をひとつ、叶えてやらなければならないのが、当店のシステムです。ああ、……いや、ちがう、何でも叶えてやろう。さあ、言ってみろ、貴様の欲望の、ありったけをな!」 私は内心、コイツ、宝箱に入る前は、どこに勤めていたのだ、と、背中に冷たいものが走るのを感じながらも、定番のアレを、頼んでみることにした。 「はい! 今すぐ、願いを、100個に………」 「ん? 何だと? ”今すぐ、湯を沸かす、"たきぎ"になりたい? うむ、良かろう」 シスパは、そう言って、宝箱の横に、うず高く積まれた、木片を指差して、ウィンクする。 なるほど、そういう「システム」か。私は、いろんな意味で、鳥肌が全身を駆け巡るのを感じつつ、「やだな、ハハハ、"100個に広げたやつを、1つにしぼります" 、ですよ! 」 「そうか、そうか、フフフフフ!」 顔を突き合わせて、乾いた笑いをキャッチ・ボールする私達。互いの心の距離感が、ぐっと近づいた気がする。ぜひとも、気のせいであってほしいと、私は秘かに願った。 そんな、私の葛藤など、何処吹く風で、シスパは、翼をひときわ大きくはためかせ、言い放った。 「さあ、何でも言ってみろ! 貴様のうす汚れた、靴の裏に貼り付いたガムのような、願いをな! 金か? 車か? 異性か? 異星人か? 伊勢エビか? 何でもござれだ。1個だけならな!」 私は、一瞬、伊勢エビに傾きかけた己を立ち直しつつ、あらゆる望みが手に入る機会を手にしたことに、くくく、と、内心、笑みを洩らしていた。(続く)

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