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ヒナータフ通信#79 「お宝は、いつもここに」

 

ヒナータフ通信#79 「お宝は、いつもここに」

 
 
 
私が帰宅して、ドアを開けると、いい匂いが漂ってくる。急いで、キッチンへ向かう私。 
 
 
「よっ!」 
 
 
 
 
 
そこには、筋肉にエプロン姿で振り向く、シスパがいた。思わず、すてーん、と、空中で半回転して転ぶ私を、見事にキャッチする、シスパ。
 
 
 「あのー、帰ったんじゃなかったんですか? それに、『また、銀河の彼方で会おう』、とかなんとか。」
 
 
 けげんな目で見つめる私に、シスパは、悪びれもせず、答える。
 
 
 「ここだって、銀河の彼方だ。視点の違いだな。勝手に部屋に入ったのは、許せ。疲れただろうから、帰る前に、シチューでも作って、ごちそうしてやろうかと思ったのだ。」 
 
 
内心、誰のせいで、疲れたと思っているのだ、と、ぼやきながら立ち上がり、お玉で、シチューを味見。 ! とても、美味しい。 
 
 
それを見たシスパは、得たりとばかりに笑みを浮かべた。
 
 
 「どうだ、銀河一の筋肉から、繰り出される、シチューの味は? 俺は、役に立つぞ。しばらく、やっかいになる。」 
 
 
「何ですと⁈」
 
 
 私は、「筋肉シチュー」により、一挙に食欲がトーンダウンし、おかげで、さりげない流れで、居候を決め込もうとしている、シスパの思惑に気づくことが出来た。
 
 
 「いや、それじゃあ、せっかく自由の身になった意味がないでしょう? また、天使軍団長として、ぜひとも大活躍して下さい。かげながら、応援しています!」 
 
 
シスパは、首を捻り、額に指を置いて、考え込む素ぶりをした。 
 
 
「何が、まずかったのだろうか。不満は、味塩コショウか?」 
 
 
「いえ、根本的に違います。いいから、すぐ、出てって下さい。今すぐに」  ドアを指差す私。
 
 
シスパは、うなだれ、エプロンを脱いで、きちんと畳むと、ドアの方へ向かった。
 
 
窓から見ると、何度も振り返っては立ち止まり、しまいには、指を咥えて、こちらを見やる、名残惜しげな、シスパの姿が。
 
 
 「ああー、もう!」 私は、その、捨てられた仔犬のような姿を見て、頭を掻きむしると、彼を追いかけた。 
 
 
***
 
 
 
 
一緒に暮らし始めて、三か月。
 
 
彼は、バイト先の花屋から、もらって来た薔薇の花束を、私に突き出しながら、こう言った。
 
 
 「おい、ニンゲン…………ではなく、『入間(いるま)様』、…………でもなく、『瑠子(るこ)』さん、オレ…いえ、私と結婚して下さい」
 
 
 私ー入間瑠子(いるま・るこ)ーは、シスパの脛を蹴りつつ、笑顔で、はい、と花束を受け取った。
 
 
 シスパは、初対面の時から、私のことを、「ニンゲン」と、非常に大雑把なくくりで呼んでいたのだが、あれはどうやら、私の心を勝手に読んだ為、脳裏に浮かび上がった漢字表記の名前を、そう勘違いしてしまったらしい。まあ、今となってはどうでも良いことだが。
 
 
 名前と言えば…………おかっぱ頭の小学生の頃、クラスの悪ガキどもに、「いるまるこちゃん」と、アニメのキャラクターに引っ掛けて、散々、からかわれた私だが、そのおかげで、かなり鍛え上げられ、今では、天使軍団長に、約三か月で、我が家の上下関係を叩き込むほどに成長している。 
 
 
あ、これからは、「シスパ・るこ」に、なるのか。続けて読むと、何処かの、ショッピングモールみたいな名前だが、からかう者は、もういない。
 
 
 「ぷっ。何だか、人間界の、ショッピングモールみた………」
 
 
 私は、言いかけたシスパの足の甲を、スリッパで、げしげしと、踏み付けた。
 
 
 「す、す、すみません、ルコさん! あ、でも、これって、『探していた青い鳥は、実は、家にいた』ってやつじゃ? ほら、私、翼が生えてるし、青いですしね!」 
 
 
私は「そうね」、と、にっこり微笑みながら、両手で、彼の頬を握り、左右に、びろーん、と伸ばした。単に、何か、上手いことを言ったのが、気にくわなかっただけである。
 
 
 私は、輪ゴムのように伸びた頬をさする、シスパの姿を見ながら、もしかして、今、私って、銀河系最強なのかしら、と思った。 
 
 
***
 
 
 
 
時は流れ、私とシスパの間には、女の子が誕生した。
 
 
生まれつき、背中に小さな白い羽の生えた娘は、赤ん坊の頃から、勝手に飛んで行って、私達をやきもきさせた。
 
 
 小学校に上がる際には、肩甲骨の下辺りに、出し入れ自由というスキルを身につけたが、暇さえあれば、空中に浮かんでいる。
 
 
そんな娘を、猫可愛がりの旦那の脛を、たまに、蹴飛ばしつつ、我が家は、一家仲良く、平和に暮らしている。
 
 
 いつか、娘が一人立ちしたら、記念にとってある、あの古地図を、プレゼントしよう。そして、彼女も、運命の人と出会うのかもしれない。 
 
 
今は、もう、夏。 
 
 
私は、最初にシスパからもらい、使わず大事に飾り箱にしまってある、金と銀と普通の「ソイエ」を眺め、蓋を静かに閉じると、シスパと娘がはしゃいでいる、リビングに向かった。
 
 
 
 
 (おしまい)
 
 
 
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